InstagramやTwitter等を始めとする各種SNSやWEBサイトでの撮影地公開について、皆様はどのようにお考えでしょうか。
カメラマンによっては撮影地を全て公開する人もいれば、撮影地の公開は一切NGという方、市町村名までならOK等という方など、撮影地の公開については個人ごとに考え方が大きく異なります。
WEBでは撮影地公開の有無についてあまり話題に上がることがなくこれと言ったマナーが無いのが実情ですが、なぜ撮影地の情報を公開しないのかや、撮影地情報の公開についての許容範囲についてお話します。
目次
撮影地情報を非公開にする理由
昔と違って今や撮影地情報はWEBやSNSを使用し公開することでまたたく間に世界へ発信できます。
素晴らしいロケーションの撮影地であれっば、少し前までは無名の撮影地だった場所が短期間で有名になることも多々あります。
しかし、カメラマン目線や近隣住人目線からすると撮影地が有名になることは決して良いことばかりではありません。撮影地が有名になることで近隣住民にご迷惑をおかけすることや、今後の撮影が困難になってしまう被写体もあり、撮影地情報を公開することについてはメリットよりデメリットのほうが遥かに多いと私は考えています。
下記の被写体は特に撮影地公開NGの人が多いジャンルです。撮影地が広く知られることでのデメリットとして具体的には下記の通りです。
マナーの悪いカメラマンが増える(目立つ)
有名になればなるほどカメラマンがアクセスするようになります。大半のカメラマンは周囲に迷惑をかけないようにマナーを守って撮影しますが、悲しいことにカメラマンの中には自分本位の考えを持つマナーの悪い人がいます。実際に私が見かけたマナーの悪いカメラマンは下記のとおりです。
- ゴミをポイ捨てする
- 私有地や立ち入り禁止エリアに不法侵入する
- 通行や交通の妨げになる
- 騒音が増える(近隣住民の迷惑になる)
- 撮影の邪魔になる人に怒号を放つ
とても悲しいことにマナーを守る100人のカメラマンの中に1人だけマナーの悪いカメラマンがいるだけで、近隣住人などからカメラマンはマナーが悪い・迷惑・怖いと印象付けられる場合があります。
上記の具体例を上げると、ニュース等で話題になりやすい撮り鉄と言われる鉄道カメラマンも、大半の人はマナーや節度を守って撮影しているのに一部のファンやグループが悪目立ちしてしまい撮り鉄全体の印象が悪くなっています。
撮影地が有名になるほどカメラマンのマナーについての話題が出ることが多くなり、マナーを守れないカメラマンが増えるほど相対的に近隣住人からのクレームも増え最悪の場合、立入禁止や撮影禁止エリアになってしまいます。
実際に撮影禁止になったスポットは全国に何箇所もあります。
撮影地独自の暗黙のルールで悲惨な死亡事故を招いたスポットもあります。有名な撮影地になればなるほどトラブルが発生しやすくなるのです。
人が増えると危険な環境である。
撮影地の中には危険な場所もあります。
非日常的な風景写真が撮影できるスポットなどは、交通面が整備されていない場所も多く駐車スペースの限られていたり道幅が狭くて車がすれ違いにくく危険な場所もあります。混雑が原因で事故や渋滞の原因となる可能性も考えられます。
上記のような撮影地については配慮して公開されないカメラマンが多いと思います。
カメラマンにとって大切な撮影地な場合
その人に取って大切な撮影地の場合も考えられます。
私感ですが魅力的な写真の条件の一つとして「見慣れない風景」や「見慣れない物」や「見慣れない構図」など見慣れないから写真だからこそ魅力や感動が生まれると思っています。
極端な例ですが、雪景色について雪の振らない地域の方が雪国に訪問した際に「雪景色」に感動されるのですが、雪国育ちの私は「雪景色」にそこまで感動しません。どんなに素敵な景色でも見慣れてしまうと感動が薄れてしまいます。
撮影地が多くの人に認知されることで、同じような写真を目にする機会が増えどんなに魅力的な場所も「見慣れた撮影地の写真」となり徐々に感動や魅力が薄れると思っています。そうなると撮る側からしても見る側からしても撮影する面白みが減ってしまいます。
マイナーな撮影地ほど「ここはどこだろう」「こんな場所に行きたい」等のミステリアスな魅力を放つのです。
撮影地の情報はカメラマンのオリジナリティ要素の一つでもあるのです。
撮影地情報公開NGが特に多い被写体
撮影地が有名になると様々な理由から撮影自体ができなくなる被写体もあります。
個人的な主観ではありますが、撮影地情報公開をNGにしている人が多いジャンルをご紹介します。
野鳥・野生動物写真
野鳥や野生動物やホタルなどは人が増えると撮影できなくなる被写体の代表格。人が増えることで生態系へ悪影響が生じる場合もあります。
野鳥・野生動物は警戒心が一段と強いため数十メートル近づいただけで逃げ出します。人の多くなればその場所には姿すら見せなくなり今後一切撮影できなくなってしまうのです。
野生動物を撮影しているカメラマンが詳細な撮影地を非公開にしている理由はこれが大半です。
夏の風物詩であるホタルも人が増えることでスマホやライトの明かりをつける人も出てきて繁殖のタイミングを失い生息数を減らしてしまいます。
管理地であれば管理人が注意してくれるのですが、非管理地の場合はそうはいきません。
上記の点も踏まえ、野生動物を撮影していて撮影地情報を非公開にしているカメラマンに撮影地を聞くのは控えたほうが良いと感じます。
星景写真
星景写真は人が多くなることで撮影できなくる被写体の代表格。
人が増えることで下記の様なデメリットが出てきます。
光害が増える。
星景写真を撮影する際は、人が多くなるほど車やLEDライトなどの明かりが頻繁に発生し撮影の邪魔となる光害となり星空を撮影しにくくなります。
星景写真家の中には1枚の写真を完成させるために同じ場所で数時間かけて撮影する方も居られます。
光害が頻繁に発生する環境では星景写真が極端に撮影しにくくなりライトの光で星空そのものが見えなくなったり、地上景に表現したくないライトが写るなど、数時間かけた写真が全てパーになってしまう場合があるのです。撮影地が有名になればなるほど撮影のチャンスが極端に減ります。
星景写真が撮影できるような好条件の夜は少ないため事前に綿密な計画を立てるカメラマンも多く、撮影地が有名になると「数時間かけて訪れたのに人が多くて写真が撮れない」なんてこともあり得るのです。
様々な条件が揃わないと撮影できない星景写真ゆえ、星景写真家は基本的には撮影地を公開いたしません。
※安全面が第一優先です。移動に伴うライトは他の撮影者を気にせずもちろんつけてください。
鉄道写真
決まった時間に線路上を走り抜ける鉄道写真きれいに撮影できる構図を事前に把握しやすい分、特定の場所に人が集中しやすく特に場所の取り合いが激しいジャンルでカメラマンで混み合っていると撮影できない場合があります。
カメラマンによって場所取りの争いがない自分だけのスポットを探す人も多く、山の中を駆け抜けるような鉄道写真の中には草木を掻き分けた僅かなスペースを見つけ撮影している人もいます。
撮影する場所が重要になる鉄道写真だからこそ、詳細な撮影地を公開しない人が多く存在します。
コスプレ撮影の野外ロケ地
人によっては全く馴染みのないコスプレですが、野外ロケ地を聞かれたら十中八九良い印象を持たれないジャンルです。
一般的なポートレート撮影と比べると一般人から奇異な目で見られてしまいやすいコスプレですが、コスプレイヤー達ネット中心に発信することが多いため人一倍マナーについてしっかりしています。
多くのコスプレイヤーはコスプレイベントをメインで活動していますが、イベントでは背景を含めワンパターンな写真になりがちでイベント以外の場所を探して撮影する人もいます。
撮影予定のロケ地では撮影OKの場所なのか撮影許可を取ったかなど事細かに確認してコスプレイヤー全体のイメージを悪くしないよう心がけている人が多いです。
上記のように苦労して許可取りや調査をしたロケ地を公開すると「ここは○○さんが撮影していたから無断で撮影してOKだよね」と容易な考えで撮影する人も現れ、場所によってはその後の撮影自体がNGになってしまう場合もあります。
上記の理由から安易な気持ちでロケ地を聞くのは避けるのが無難です。
撮影地情報を公開するメリットについて
撮影地情報の公開に関してネガティブなお話が続きましたが、情報公開することでのメリットについてもお話いたします。
- 交流の輪が広がる
- 撮影地が有名になる
- 情報を共有できる
撮影地情報を公開することでWEBやSNSでアクセスが増えます。また、同じ場所で他の人がどんな写真を撮っているのか探しやすくコミュニケーションにも繋がります。
地域おこしなど集客を求めており、拡散することで主催者にも喜ばれるようなイベントはどんどん拡散してあげるべきです。撮影地が有名になればその地域や施設の活性化にも繋がります。
撮影地情報非公開のカメラマンに直接聞くのはNG
撮影地情報を聞くこと自体がマナー違反と考えているカメラマンは少なからず存在しており、SNSやWEB等で撮影地を公開していないカメラマンに撮影地情報を聞き出すのは極力控えたほうがいいでしょう。そのカメラマンにとっては「公開したくない情報だから撮影地を隠している」という状況です。
そのようなカメラマンにコメントやメッセージで何気無くカメラマンに撮影地を質問するだけで、相手の心象を悪くしてしまう場合があります。
カメラマン側からしたら、自分が秘密にしたい撮影地を教えても、その人が撮影地を守秘してくれる保証はどこにもありません。
仮に自分が知っている撮影地の写真をSNSで見かけてもコメントで「ここ○○ですよね!私も大好きです。」等、不特定多数が見て場所を把握できるコメントは控えてあげてください。ポジティブなコメントなのにお互いの心象が悪くなる場合があります。
「私もここ大好きです!」など撮影地を濁したコメントやメッセージにしてあげると心象が非常に良いです。
また、撮影地を簡単に教えてくれる場合もありますが、教えてくれた人にとってはすごく苦労して見つけ出した撮影地かもしれません。
あなたが信用できるからこそ秘密の撮影地を教えてくれた可能性があるため、他人に教えてもらった撮影地の情報を容易にSNSで公開しないほうが無難です。
今後の関係にヒビが入る可能性も考えられます。
教えてもらった撮影地をSNSやWEBで公開する場合は事前に教えてくれた人に一言聞いてみましょう。
撮影地情報公開の許容範囲
撮影地情報の公開に関してすでに有名な撮影地や、公園や施設内などの公共の場所やイベントなど撮影者が増えてもトラブルにならない場所であれば問題ないと思います。
撮影地を公開することは場合によってコミュニティを広げることができるのは確かですし、撮影地の公開の有無は撮影者の自由です。
一方、先述でお話したような人が増えると撮影が困難になる被写体の撮影地を公開する際は、他のカメラマンから知らぬうちに反感を買ってしまう可能性もあります。
また、撮影地の中には認知度が低いマイナーなアクセスが悪い上に、車移動が必須で路面状態が悪く車幅も狭いような撮影地が有名になりカメラマンが群がれば交通を阻害し事故や渋滞を起こす原因となります。人が増えることで危険になる撮影地や、撮影自体が困難になる場所に関しての撮影地情報の拡散はなるべく控えたほうがいいと個人的には考えています。
写真が好きな人は具体的な撮影地の情報を公開しなくても市町村名だけ書いておけば写真内の情報から場所を把握し自然と集まります。
最後に
むやみやたらに撮影地情報を不特定多数に見えるよう公開・拡散することはカメラマン目線からするとメリットよりデメリットのほうが多いと考えています。
非公開にしている撮影地を聞かれるのが嫌な方は私を含め一定数存在します。
個人的な印象ですがプロや上級者になればなるほど具体的な撮影地は公開しない傾向と感じます。
自然環境や安全性面や撮影環境面からの撮影地情報の保護についてはカメラマンとして非常に重要なマナーであると考えています。
「減るものじゃないから」という意見もあるかと思いますが、実際には「立入禁止や撮影禁止」となり撮影地が減る場合もあるのです。
特にプロカメラマンにとっては撮影地の情報は飯の種になる情報です。
ご自身で大切に思っている撮影地の取り扱いには十分注意しましょう。