カメラのローパスフィルターとローパスフィルターレスの画質・解像度の比較

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ローパスフィルターの有無による画質の比較
Category: TIPS, カメラ

今回はデジタルカメラのローパスフィルター搭載機とローパスレスフィルター機の有無によるモアレ・擬色軽減効果と解像感や画質にどれだけ違いがあるか比較検証します。

ローパスフィルターの効果について

「モアレ」や「擬色(偽色)」と言われる現象を抑えるため、カメラのセンサーの前面に「ローパスフィルター」が搭載されている機種があります。
ローパスフィルターは「モアレ」や「擬色」と言われる現象を抑え、安定した撮影を補助するために用いられます。
ローパスフィルターを通すことで写真に僅かなぼかし効果が生まれモアレや擬色発生を抑えてくれる原理なのですが、その僅かなぼかしが原因で写真の解像感が低下すると言われています。

「ローパスフィルター」による解像感の低下を抑えるために登場したのがカメラセンサーからローパスフィルターを排除した「ローパスフィルターレス」です。カメラのセンサーの画素数が多くなるほど「モアレ」や「偽色」が発生しにくくなるため、高画素機が増えた近年ではローパスフィルター排除することで解像感を保ったまま撮影が行えるローパスフィルターレス機が主流になってきました。

高画素カメラだからと「モアレ」や「偽色」を完全に抑えられるわけではありません。
より安定した撮影を実現するためローパスフィルターを搭載し続ける機種もあります。

モアレ・擬色(偽色)を軽減する

モアレとは
上記の画像では波打つような模様が出ているものがモアレとなります。
ディスプレイや衣服など細かい格子状の被写体を撮影した際に、波打つ縞模様の描写が現れる現象です。
ローパスフィルターのメリットとしてモアレの発生を軽減する効果があります。

擬色とは
被写体に本来無い色味が写ってしまう現象です。
上記の画像でいうと本来白一色のディスプレイに紫やグリーンなど本来無い色が現れている部分が擬色になり、衣服等のきめ細かな格子状の網目を有する被写体撮影する際に発生しやすく写真編集ソフトで後処理するのも手間のかかる厄介な現象です。

ローパスフィルターはモアレや擬色を抑える効果があり現実に近い忠実な色味を再現しやすくなります。

ローパスフィルターの有無による解像度・画質の比較

比較機種

今回要する機種はPanasonicのマイクロフォーサーズ機である「LUMIX GM5 (ローパスフィルター搭載)」と「LUMIX GX7mk2 (ローパスフィルターレス)」どちらもLive MOS形式の1600万画素センサーを搭載したカメラです。
画像処理エンジンのバージョンが若干異なるためあくまで目安としての検証となりますがご了承下さい。

ローパスフィルター自体による中央や周辺の画質差はありませんが、レンズに中央・周辺・コーナーと解像度に性能差がありレンズの中心から離れるほど解像度が低下する傾向にあります。レンズによってはローパスフィルターによる画質解像感の低下でトリミングできる箇所の許容範囲に差が生じる場合があります。

今回は中央・周辺・コーナーごとに画像を等倍確認します。

[比較機材]
カメラ

LUMIX GM5 : ローパスフィルター搭載機
LUMIX GX7MK2 : ローパスフィルターレス機

レンズ
OLYMPUS M.ZUIKO 40-150mm F2.8 PRO (レンズフィルター無) / F8.0

撮影設定
撮影設定 : RAW撮影 → JPEG(WEB用)画質80書き出し
露出補正 : ±0
WB : 晴天
その他デフォルト設定

元画像

元画像 (GM5)

JPEG元画像ダウンロード
元画像がほしい方は下記にノートリミングのJPEGデータをご用意致しましたのでご自由にダウンロードしてお使いください。

中心等倍切り出し

ローパスフィルター有無による解像度の比較(中央)
OLYMPUS 40-150mm F2.8 PRO / F8.0

左側GM5(ローパスフィルター搭載) / 右側GX7MK2(ローパスフィルターレス)

ピクセル等倍で比較するとローパスフィルターレスであるGX7MK2のほうが解像感に優れコントラストや彩度も高いヌケのいい写真となりました。解像感が高ければトリミングをする際も有利になります。しかしよく目を凝らしてみると右上のビルの屋上にあるフェンスに黄色い縦縞の擬色が発生していることがわかります。
一方、ローパスフィルター搭載のGM5はGX7MK2と比べると全体的に解像感が抑えられコントラストも低い眠い写真となりましたが、GX7MK2で発生したフェンスの擬色の発生は抑えられております。

周辺切り出し

ローパスフィルター有無による解像度の比較(周辺)
OLYMPUS 40-150mm F2.8 PRO / F8.0

左側GM5(ローパスフィルター搭載) / 右側GX7MK2(ローパスフィルターレス)

解像感が下がってくる周辺画質、ローパスフィルター搭載機は看板の文字や住宅の壁の線などがぼやけて視認性が悪くなっています。
周辺画質が優れていないレンズを使用している場合はトリミングをするか躊躇するかと思います。

コーナー切り出し

ローパスフィルター有無による解像度の比較(コーナー)
OLYMPUS 40-150mm F2.8 PRO / F8.0

左側GM5(ローパスフィルター搭載) / 右側GX7MK2(ローパスフィルターレス)

検証した結果、上記の通りローパスレスフィルターのほうがシャープに写り抜けの良い写真となりましたが、ピクセル等倍で写真を見比べない限り解像感の差はわからないほど僅かなものでした。

ピクセル等倍で確認しなければ違いはまずわからないでしょう。

ローパスフィルターの有無による擬色・モアレの比較


次はローパスフィルターによるモアレや偽色の効果を検証していきたいと思います。

[比較機材]
カメラ

LUMIX GM5 : ローパスフィルター搭載機
LUMIX GX7MK2 : ローパスフィルターレス機

レンズ
Panasonic LUMIX G 14mm F2.5 (撮影時F4.0)

撮影設定
撮影設定 : RAW撮影 → JPEG(WEB用)画質80 書き出し
露出補正 : ±0
WB : 晴天
その他デフォルト設定

ローパスフィルターの有無による擬色・モアレ測定(静止画)

液晶ディスプレイを利用し複数パターンからモアレの有無を検証しました。
ローパスフィルターの有無でどのような差が生まれるのでしょう。

■ ディスプレイからやや離し撮影した擬色・モアレの写真

■ ディスプレイにやや近づけ撮影した擬色・モアレの写真

■ 擬色・モアレのピクセル等倍画像

■ ディスプレイを斜めから撮影した擬色・モアレの写真

ローパスフィルター搭載のGM5とローパスフィルターレスのGX7MK2ともにモアレと偽色が発生しているのがわかります。
モアレ・擬色共にGM5のほうが良好です。特に擬色は明らかにGM5のほうが良好な結果となりました。

液晶ディスプレイでの擬色・モアレ測定 (動画)


動画ではどのような差が出るのでしょうか。
GM5とGX7MK2で簡易的に検証しました。

ISO200
シャッタースピード 1/100

※お互いの機種の動画性能が違うためGM5のほうがややクロップ(拡大)されています。

GM5 モアレ・擬色検証動画 (ローパスフィルター搭載)

GM5 モアレ・擬色検証動画 (ローパスフィルター搭載)


GX7MK2 モアレ・擬色検証動画 (ローパスフィルター搭載)

GX7MK2 モアレ・擬色検証動画 (ローパスフィルター搭載)

パープルフリンジへの影響の比較

擬色の一種であるパープルフリンジではローパスフィルター搭載の有無で違いがあるのでしょうか。
簡易的に検証してみます。

[比較機材]
カメラ

LUMIX GM5 : ローパスフィルター搭載機
LUMIX GX7MK2 : ローパスフィルターレス機

レンズ
Voigtlander NOKTON 25mm F0.95 (F0.95)

撮影設定
撮影設定 : RAW撮影 → JPEG(WEB用)画質80 書き出し
露出補正 : ±0
WB : 晴天
その他デフォルト設定

ローパスフィルターの有無によるパープルフリンジの検証

ローパスフィルターの有無の効果は感じられませんでした。

ローパスフィルターの有無による軸上色収差への影響の検証

こちらもレンズ由来の収差となりローパスフィルターの有無の効果は感じられませんでした。

ローパスフィルター搭載機のメリットについて

ローパスフィルター搭載機は擬色が発生しにくい分、色味の再現度が高く意図しない失敗を減らせるため撮影品質が安定します。
また、ポートレートを撮影するには衣服に発生しやすく後処理が困難なモアレ抑えられるとともに、女性の毛穴を目立たせず肌がなめらかに撮影できる効果もあります。
印刷用データを撮影される方や動画撮影など映像関係のお仕事もされる方はローパスフィルター搭載機のほうが安定した撮影を行えるのではないでしょうか。

ローパスフィルター搭載機で解像感が欲しければPhotoshopでスマートシャープ等の処理を行うことで簡単にシャープに仕上げることも可能です。
スマホやタブレット程度の小さな画面をメインで鑑賞する人はローパスレスフィルターの有無に関してあまり拘らなくても良いように思います。

  • ポートレートを撮影する方
  • モアレ等の意図しない失敗を減らしたい方
  • ピクセル等倍で写真鑑賞しない方

ローパスフィルターレス機のメリットについて

トリミングを多様される方は、よりシャープで繊細な描写が可能なローパスフィルターレス機を選びましょう。
特に動物や野鳥撮影をされる方で羽毛の一本一本を解像させたい人は高画素機のローパスフィルターレス機がおすすめです。
近年ではカメラや画像処理の進化に伴いローパスフィルターを搭載せずとも擬色・モアレの発生を低減し解像感の高い写真が撮れるようになっています。

  • 動物や野鳥撮影
  • 風景写真
  • トリミングを多様する方
  • 解像感にこだわりを持つ方

比較検証の総評

今回検証に使ったGM5とGX7MK2は画像処理エンジンの世代こそ違いますがセンサーのスペックは同等です。
解像度も大画面モニターでピクセル等倍表示で見比べてみなければわからない程度の違いです。お互いに一長一短があるためご自身の用途にあった機種を選びましょう。

ローパスフィルターレス
コントラストや解像感についてはローパスフィルターレスのほうが抜けがよく優れていました。風景写真や野鳥・動物写真などでトリミングを多用する方はローパスフィルターレスで撮影したほうが鮮明にトリミングができるのでおすすめです。

ローパスフィルター搭載機
縞模様のモアレの発生はローパスフィルター搭載機種のほうがやはり少なく感じましたが、擬色に関しては思ったより大きな違いが無く逆にローパスフィルター搭載機のほうが大きく感じることもありましたが、モアレは極端に少なくなるためポートレートや商品写真などを撮影する際などは極力モアレが発生しにくい方が画像処理が楽です。また細部での擬色が発生しにくいため色の再現率が高く安定したカメラワークが可能です。
様々な被写体を撮影する場合はローパスフィルター搭載機種のほうが失敗は少ないと思います。

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